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設立の趣旨

 大学図書館が提供する学術情報は従前の図書・雑誌だけでなくデジタル化、ネットワーク化によって多様化し、大学図書館の機能もデジタル情報源の作成あるいは提供など高度化が期待されている。しかしながら、ここ数年、大学図書館が置かれている状況は、少子化に伴う大学経営の危機感から、図書費や図書館運営費が抑制あるいはカットされる傾向にあり、さらには人件費を削減する政策が顕著にみられる。この結果、各大学図書館での学術情報の基盤整備(資料整理等)が弱体化し、また、アウトソーシング導入や人事異動が頻繁に行われる結果、専門的知識を必要とするはずの職員数が著しく減少するに至っている。

 このように大学図書館をプラットフォームとするわが国の教育研究の高度化や学習機会の確保の未来を展望しようとする時、甚だ困難な局面に立ち至っていると言わざるを得ない。図書館をどのように経営するか、OJTが不可能になりつつある職員の研修プログラムをどのように設計し実行するか、必要とされる知識・技術レベルをどのように維持するか、意欲ある有能な非正規職員の確保と彼らのキャリア設計をどのように図りうるか等、個々の大学図書館や既存の大学図書館界の緩やかな協力団体の努力だけでは解決が困難になっている。
「大学図書館支援機構」は、図書館を通して教育研究レベルの維持向上を図り、かつ学生への学習機会の提供環境を改善しようと努力する大学を、さまざまな事業を通して支援するために設立するものである。政府機関、民間、大学団体、図書館コンソーシアム等からの支援あるいはそれらの機関との協働を図りつつ事業を展開してまいりたい。

 日本の科学技術および学術の発展を担う大学において、大学図書館はその情報基盤としてこれまで以上に質を高めることが要請されている。図書館が独自性を発揮して組織として自律的に新たな取り組みをすることも求められているが、大学組織の外から大学図書館の運営を非営利事業として支援する事業体がわが国には事実上欠落していた。北米では非営利団体の事業体(OCLC、JSTOR等)が各種のサービスを図書館界に提供しており、図書館を外から支える機構が日本でも非営利活動法人として求められていると考える次第である。